敬語の種類と使い方|ビジネスに役立つ敬語表現を分かりやすく解説

敬語の種類・使い方・よくある間違い

敬語とは何か

敬語とは、話している相手や、話題にしている人などに対して、敬意や尊重の気持ちを表す言葉づかいです。一般に、尊敬語・謙譲語・丁寧語の3つに大別されます。

その場の状況や、年齢、立場、役割の違いなどを考慮して、適切に敬語を使うことで、相手や周囲の人を尊重する気持ちを表現できます。

敬語を使う意味

地位や身分が固定的・絶対的だった時代ならともかく、1人ひとりが平等な現代において、敬語は必要ないのではないか、という考え方もあるかもしれません。

しかし現代では「こういう相手には、いつでもこの言葉を使わなければならない」といった、固定的な敬語の使い方をする必要はありません。

敬語を使い分けることで、社会人としての常識を示すとともに、相手との関係(距離感)や、その場の状況に対する自分の気持ち・認識を主体的に表現できるのです。

敬語の種類

敬語の3分類

敬語の種類としては、尊敬語・謙譲語・丁寧語の3つが一般によく知られています。

  1. 尊敬語(そんけいご)
  2. 謙譲語(けんじょうご)
  3. 丁寧語(ていねいご)
尊敬語は、話している相手や話題にしている人(その行為や状態)などを敬い高める表現です。謙譲語は、自分側の物事についてへりくだった言い方をすることで、相手への敬意を示す表現と言われます。

丁寧語は相手を立てたり、へりくだったりするのではなく、名詞に「お」や「ご」をつけたり、語尾を「です」「ます」にしたりすることで言葉を丁寧に述べる表現です。

敬語の5分類

文化庁の資料『敬語の指針』では、謙譲語を「謙譲語Ⅰ」と「謙譲語Ⅱ」(丁重語)に、丁寧語を「丁寧語」と「美化語」に分けた5分類が提示されています。

尊敬語 「いらっしゃる・おっしゃる」型
※相手側や話題にしている人物などに使う
謙譲語Ⅰ 「伺う・申し上げる」型
※主に自分側の行為に使う。その行為などの相手を立てる
謙譲語Ⅱ(丁重語) 「参る・申す」型
※主に自分側の行為に使う。話している相手に対して丁重に述べる
丁寧語 「です・ます」型
美化語 「お酒・お料理」型

順番に見ていきましょう。

尊敬語

尊敬語は相手側や話題にしている人物などを立てる(高く位置づけて述べる)表現です。その人物の行為や物事、状態などに使います。

動詞の尊敬語には、広くいろいろな語に適用できる一般的な語形(一般形)と、特定の語形(特定形)でつくられるものがあります。

動詞の尊敬語の一般形

一般形の主な例は以下の通りです。

  • お(ご)~になる
    例:聞く→お聞きになる、利用する→ご利用になる
  • ~(ら)れる
    例:読む→読まれる、始める→始められる、利用する→利用される
  • (ご)~なさる
    例:利用する→(ご)利用なさる
  • お(ご)~だ
    例:出かける→お出かけだ、立腹している→ご立腹だ
  • お(ご)~くださる
    例:読む→お読みくださる,指導する→ご指導くださる

動詞の尊敬語の特定形・変則形

以下に挙げたのは、特定の語形や変則的なかたちでつくられる尊敬語の例です。

元のかたち 尊敬語
行く いらっしゃる、おいでになる
来る
いる
言う おっしゃる
する なさる
食べる 召し上がる
くれる 下さる
見る ご覧になる
寝る お休みになる
着る お召しになる
敬語には複数の言い方がある

上記の特定形や変則形に当てはまる語であっても、一般形で表せる場合があります。たとえば「行く」「来る」はそれぞれ「行かれる」「来られる」というかたちでも尊敬語になります。

このように、敬語は同じ内容をいくつかのかたちで表すことができます。多くの場合、一般形(「行かれる」など)よりも、特定形・変則形(「いらっしゃる」など)を使う方が丁寧な印象になります。

物事や状態(名詞・形容詞など)の尊敬語

名詞や形容詞の尊敬語は、一般に言葉の前に「お」「ご」などをつけて表します。

  • お名前
  • ご住所
  • お導き
  • ご出席
  • お忙しい
  • ご立派
このほか「お若くていらっしゃる」「ご壮健でいらっしゃる」のように、語尾を「~くていらっしゃる」「~でいらっしゃる」のかたちにして尊敬語をつくることがあります。

また「御地(おんち)」「貴社(きしゃ)」などのように「御」や「貴」をつけたり、「御高配(ごこうはい)」「御尊父(ごそんぷ)」「御令室(ごれいしつ)」のように「御」とともに「高」、「尊」、「令」などを加えるかたちもあります。これらは主に書き言葉として使われます。

謙譲語Ⅰ

謙譲語Ⅰは主に自分側の行為について、その相手(向かう先)を立てる(高く位置づけて述べる)表現です。

動詞の謙譲語Ⅰにも、広くいろいろな語に適用できる一般的な語形(一般形)と、特定の語形(特定形)でつくられるものがあります。

動詞の謙譲語Ⅰの一般形

一般形の主な例は以下の通りです。

  • お(ご)~する
    例:届ける→お届けする、借りる→お借りする、案内する→ご案内する
  • お(ご)~申し上げる
    例:願う→お願い申し上げる、説明する→ご説明申し上げる
  • ~て(で)いただく
    例:読む→読んでいただく、指導する→指導していただく
  • お(ご)~いただく
    例:書く→お書きいただく、応募する→ご応募いただく
「~していただく」も謙譲語Ⅰ
謙譲語Ⅰは主に自分側の行為などに使う敬語ですが、上記の「お借りする」「指導していただく」のように、結果的に相手側から何かをしてもらうことを表す言葉もこれに含まれます。

動詞の謙譲語Ⅰの特定形

以下に挙げたのは、特定の語形でつくられる謙譲語Ⅰの主な例です。

元のかたち 謙譲語Ⅰ
行く(訪ねる) 伺う
聞く(尋ねる)
言う 申し上げる
知る 存じ上げる
※「存じ上げております」などのかたちで使う
上げる 差し上げる
もらう 頂く、拝受する
見る 拝見する
見せる お目にかける、ご覧に入れる
会う お目にかかる
借りる 拝借する

名詞の謙譲語Ⅰ

名詞の謙譲語Ⅰは一般に、「お手紙」「ご説明」といったかたちで、言葉の前に「お」「ご」などをつけて表します。

同じ語形の尊敬語と謙譲語Ⅰ

名詞の前に「お」「ご」などをつけて敬語にするかたちは、尊敬語と謙譲語Ⅰに共通しています。

これらは、行為者を立てる表現であれば尊敬語(「先生からのお手紙」「先生によるご説明」など)、行為などの相手を立てる表現は謙譲語Ⅰ(「先生へのお手紙」「先生へのご説明」など)として区別されます。

謙譲語Ⅱ(丁重語)

謙譲語Ⅱは主に自分側の行為や物事について、今話している相手(文章の場合は読み手)に対して丁重に述べる表現です。

動詞の謙譲語Ⅱの一般形

謙譲語Ⅱの一般形(いろいろな語に適用できる語形)は「~いたす」のみです。「~する」というかたちの動詞(サ変動詞)のみに適用可能です。

  • ~いたす
    例:努力する→努力いたす
    ※「努力いたします」などのかたちで使う

動詞の謙譲語Ⅱ(丁重語)の特定形

以下に挙げたのは、特定の語形でつくられる謙譲語Ⅱの主な例です。

元のかたち 謙譲語Ⅱ(丁重語)
行く 参る
来る
いる おる
言う 申す
する いたす
知る 存じる
※「存じております」などのかたちで使う
思う 存じる
※「~と存じます」などのかたちで使う

名詞の謙譲語Ⅱ

名詞の謙譲語Ⅱは「愚見」「小生」「拙著」「弊社」といったかたちで、言葉の前に「愚」「小」「拙」「弊」などをつけて表します。主に書き言葉として使われます。

謙譲語Ⅰと謙譲語Ⅱの違い

謙譲語Ⅰが行為や物事の相手(向かう先)を立てる表現なのに対して、謙譲語Ⅱは今話している相手(または読み手)に対する敬語表現です。そのため謙譲語Ⅱは、行為の対象が立てる必要のない人やものであっても問題なく使えます。

  • 「伺う」は謙譲語Ⅰ(行為の相手を立てる表現)なので「先生のところに伺います」とは言えるが、「弟のところに伺います」「海外に伺います」といった使い方は不適切
  • 「参る」は謙譲語Ⅱ(聞き手・読み手に配慮する敬語)なので、「弟のところに参ります」「海外に参ります」など、行為の対象が立てる必要のない人やものであっても使える

丁寧語

語尾を「です」「ます」などのかたちにして、話や文章の相手に対して丁寧に述べるのが丁寧語です。

  • ~です
    例:会議は月曜日だ→会議は月曜日です
  • ~ます
    例:10時に始まる→10時に始まります
  • ~(で)ございます
    例:担当の田中だ→担当の田中でございます

美化語

美化語は主に名詞の前に「お」や「ご」をつけることで、物事を美化して述べる表現です(例:「お酒」「お料理」「ご祝儀」)。

言葉の前に「お」や「ご」をつけるかたちは、ほかの敬語にもありますが、行為者や所有者を立てる尊敬語(「お導き」「お名前」など)、自分の行為などの相手を立てる謙譲語Ⅰ(「お手紙」「ご説明」など)のどちらにも当てはまらないものが美化語と呼ばれます。

「お」と「ご」の使い分け
敬語の種類にかかわらず、原則として「お+和語」「ご(御)+漢語」のかたちで使い分けます。
  • 「お名前」「お忙しい」「お手紙」「お酒」……
  • 「ご住所」「ご立派」「ご説明」「ご祝儀」……
ただし、漢語の前でも「お」が好まれるもの(「お料理」「お加減」など)、両方が使われているもの(「お返事」「ご返事」など)、「お」「ご」のどちらもなじまないものもあります。

敬語のよくある間違い

一般に「不適切」とされる敬語の使い方について、いくつか例を挙げて説明します。

尊敬語と謙譲語の混同や誤用

尊敬語を「自分側」の行為などに使う

不適切な言い方
  • 来週、(私は)ご出張の予定です
  • 私のお考えはメールでお伝えした通りです
上記の「ご出張」「お考え」のように、自分側の行為などを表す言葉に「お」や「ご」をつける場合、その行為の向かう先が立てるべき相手でなければ、自分を立てていることになるため不適切です。

ただし自分側の行為であっても、その相手を立てるのであれば、「お」や「ご」をつけても謙譲語Ⅰとして問題のない表現となります(「私からご説明します」「返信をお待ちしております」など)。また「私のお菓子」など、美化語としての用法であれば、これも問題ありません。

謙譲語を立てるべき相手の行為に使う

不適切な言い方

(客に対して)

  • 担当者に伺ってください
  • 担当者にお聞きしてください
「伺う」「お(ご)~する」はいずれも謙譲語Ⅰであり、客や立てるべき相手の行為に用いるべき敬語ではありません。

客を立てるためには、尊敬語を使って「担当者にお聞きください」「担当者にお尋ねください」などとします。「~ください」という言葉が直接的過ぎて失礼に感じられる場合には「担当者にお聞きいただけますか」といった言い方にするとよいでしょう。

不適切な言い方

(客に対して)

  • 車で参ったのですか
  • 来週、海外に参られるそうですね
「参る」は謙譲語Ⅱであり、基本的には自分側の行為などに使うものなので、立てるべき相手の行為に使うのは不適切です。相手を立てるためには尊敬語を使い「車でいらっしゃったのですか」「海外に行かれるそうですね」などとします。

謙譲語を物などに対して使う

不適切な言い方
  • このコピー機はご利用できません
  • この電車にはご乗車できません
「お(ご)~できる」は、謙譲語Ⅰ「お(ご)~する」の可能形です。謙譲語Ⅰは行為の相手(向かう先)を立てる表現ですが、上記の言い方では、コピー機や電車を立てる(高く位置づける)ことになってしまいます。

利用者を立てる表現としては「ご利用いただけません」(謙譲語Ⅰ)、「ご乗車になれません」(尊敬語)などが適切なかたちです。

不必要な「させていただく」

「~(さ)せていただく」という表現は原則として、以下のような条件で使われます。

  1. 相手側などの許可を受けた行為である
  2. それによって恩恵を受けるという事実や気持ちがある
たとえば「先ほどメールを送らせていただきました」「私は○○大学を卒業させていただきました」など、上記の条件に当てはまらない状況で「~させていただく」を多用すると、冗長な印象を与える恐れがあります。

ただし、自分の行為が成り立つのが相手のおかげかどうか、それによってどのくらいの恩恵を受けるかという判断は主観的なものであるため、どこまでが「適切」な用法と感じられるかは人によって異なるでしょう。

二重敬語は誤り?

同じ種類の敬語を、1つの語に二重に使ったものを「二重敬語」と言います。たとえば「ご覧になられる」は「見る」を「ご覧になる」という尊敬語にした上で、さらに尊敬語の「~(ら)れる」を加えた二重敬語です。

二重敬語(多重敬語)は適切ではないと言われることも多いものの、慣習的に定着している表現も少なくありません。

よく使われている二重敬語の例

  • お伺いいたす
    例:明日、お伺いいたします
  • お見えになる
    例:部長、○○様がお見えになりました
  • お召し上がりになる
    例:もう、お召し上がりになりましたか
また、2つ以上の語をそれぞれ敬語にして,接続助詞「て」でつなげたものは二重敬語ではありません。

たとえば「お読みになっていらっしゃる」は「読んでいる」の「読む」と「いる」を、それぞれ「お読みになる」と「いらっしゃる」という尊敬語にしてつなげたものです。

こうした表現は、個々の敬語の使い方と、その意味的な結びつきに問題がなければ、基本的に誤りではありませんが、いささか回りくどい言い方になる傾向があります。

適切・不適切の境界はあいまい

ある時点で「誤用」とされている用法でも、多くの人が使う中で許容されるようになっていくことがあります。また、言葉の使い方には年齢、性別、地域などによる違いもあります。

円滑なコミュニケーションのためには、敬語に関する標準的な知識を持ったうえで、自分とは異なる言語感覚をある程度受け入れる姿勢も大切です。

敬語についての参考資料

文化庁の資料

この記事は、主に以下の資料を参考にして執筆しました。
参考 敬語おもしろ相談室文化庁 動画とクイズで敬語の要点を学べるWebページです。

参考 敬語の指針文化庁 2007年にまとめられた文化庁の資料(文化審議会答申)です。敬語使用の基盤を、基本的に平等な人と人との相互尊重・自己表現と位置づけ、さまざまな例を挙げながら、敬語について詳しく解説しています。
pdfで80ページほど(本編は50ページ強)と少し長いですが、敬語について詳しく学びたい方には、市販の本や他のWebサイトなどよりも、こちらをおすすめします。